2013年4月24日 鷗友学園中学 塾対象入試報告会報告
レポートは手島先生。
----------
以下は2013年4月24日に開かれた鷗友学園の塾対象入試報告会のレポートです。例年ですと、校風や教育理念の説明を踏まえて、入試結果報告へと移る形式でしたが、今年度から4月は純粋に入試結果、内容の報告にとどめ、7月に校風や教育理念、実際の教育内容などの説明を行う形式に改まったようです。長年、同校で入試広報の先頭に立ってこられた吉野先生が、今年から新たに3年の任期で校長に就任された(前任の西川先生は引き続き同校での教務に携わっていらっしゃるようです)とのことで、吉野先生のお話から報告会は始まりました。
1.吉野校長先生より
おかげさまで今春も250名の新入生を迎えることができ、新たな一年のスタートを切ることになりました。昨日(4月23日)、校長室に4月生まれの新入生たちを呼んでお誕生日会(※この会は毎月開催されるそうです)を開いたのですが、生徒たちも「緊張するー」とか言いながら本当によくしゃべってくれまして、楽しそうにしていました。
今社会は大きく変わろうとしています。先日読んだ雑誌の記事に書かれていたお話ですが、アメリカ企業の最高責任者(CEO)に求められる資質というのが20世紀と21世紀とではだいぶ変わって来ているそうです。20世紀型リーダーというのは、権力志向というか支配的というか上から指図して物事を進めようとするimperial leadershipであったのに対し、21世紀型リーダーというのは、みんなの多様な意見をまとめあげるinclusive leadershipが求められるのだそうです。そう言われてみれば、アメリカという国でもオバマさんが大統領になったり、ヒラリー・クリントンさんが大統領候補として予備選挙を戦ったりしている。多様な人材がリーダーになろうとしている。社会全体が多様性を求める方向に変化している。お隣の韓国でも朴大統領が女性として初めての大統領になっている。儒教文化の影響の強い韓国では信じられないくらい社会が多様な方向へと変化しているのだなという感じがします。
それに比べると、日本では女性の議員数も少ない(世界第163位)ですし、女性の研究者や経営者というのも少ない、変化という点で遅れているなと感じています。このような社会を変えていく力は女子校にこそあるのではないか、鷗友がこのような社会を変えていくんだ、そんな気持ちで今おります。
数年前に理科系の大学の先生(※東京理科大か、東工大。ここは具体的な大学名が挙がっています)が鷗友にいらした時に、実際に生徒たちの実験の様子などを見られて大変感心されていました。鷗友学園の卒業生は、理科系の大学の実験室でも、率先してリーダーシップを発揮して実験結果をまとめあげているそうです。なるほど、こんな教育を行っているから、ああいうリーダーシップにあふれた卒業生を鷗友学園は送り出せるんですね、と、その先生はおっしゃっていました。
近年、鷗友が新たに始めた取り組みを2つだけ紹介します。まず1つめは、2010年から韓国のハナ高校というところと交流をはじめまして。この高校は今まで日本では灘高校ですとか海城高校とか、とにかく男子校としか交流のなかった学校なのですが、そういう学校と、日本の女子高としては初めて鷗友学園が交流をし始めた。とても歓迎してもらって、それがきっかけで相互に短期の交換留学を行うような制度にまで発展しています。生徒たちも韓国の学生たちとの交流を通じて、何て熱い気持ちの持ち主なんだとか、どうしてこのようなことを考えるのだろうかとか、様々に刺激を受けているようです。この取り組みを将来的には英語圏の学校にまで広げようと思っています。
2つ目は、生徒会の発案なのですが、2012年から東北地方の被災地への訪問を行っています。この活動が発展して、今年の春には被災地の方をお招きして東北支援講演会なども企画しました。これは震災の記憶が忘れられないようにという願いを込めてのことです。
こういった取り組みを通じて、生徒たちは今まで知らなかった価値観とぶつかり合い、向き合っています。そしてそこから新しい価値観を作りあげています。こういった取り組みを今後も鷗友学園は続けていこうと思います。詳しい教育内容などはまた7月の説明会の際にお話できればと考えておりますので、ぜひよろしくお願いします。
2.入試状況および進路状況英語教育について
2013年度入試では各回ともに志願者・実受験者ともに減少したが、近年の入学手続き率低下などをふまえて、合格者数は第1回、第2回とも増加させている。このことによって実倍率は低下しているが、鷗友併願組とチャレンジ志向組の受験生が減少したことによるものと考えているので、入学者のレベル低下ということはないと考えている(また、実際に四谷大塚、日能研、サピックス等の模試での結果偏差値を見ても前年からの変動は見られなかった)。
本校に合格しながら入学を辞退した生徒に進学先について尋ねたところ、女子学院、豊島岡女子など例年見られる学校に加え、今年は慶応中等部、都立小石川、東京学芸大世田谷などの学校からの入学辞退者が多かった。前年度は、神奈川県内の学校との併願から入学を辞退する生徒が多かったが、今年は都内の学校との併願から辞退するご家庭が多かったという印象だ。
なお本校の入学試験を複数回出願した受験生の合格率は67%で、本校受験生全体の合格率が47%だったことを考えると、本校を第一志望として希望していて、しっかりと試験対策をしてきた生徒さんは合格しやすいのではないかと思う。
またこの春の大学進学実績だが、現役生の大学への進学状況は国公立大学進学者が29%(※前年は25%)、早慶上智理科大ICUで27%、GMARCH11%等となっている。またそれ以外の学校でも医歯薬系や芸術系などへの進学で結果が出せていると思う。浪人生は全体の2割弱で、昨年は1割ほどと少なかったが、再び一昨年並みの水準に戻っている。今年のセンター試験が例年よりも難しく、その影響があったのではないかと考えている。今春は特に東大への合格実績が大きく増加し(14名)雑誌でも取り上げられたが、その他の東北大など旧帝大クラスでも進学者数は増加している(昨年の1.2倍、6年前の1.8倍)。
東大に合格した現役生の特徴として、入学して1年目の成績はよい子も悪い子もおり様々。ただ、みな学校の講習や行事には熱心に参加していたし、高校三年の1学期まで運動部で活動していた子も半分いるなど、みんな学校が大好きな子達だったなという印象がある。成績の上下動などがあっても、学校が大好きだったので友達と一緒に頑張ってこれた結果なのではないかと考えている。
鷗友学園は第一志望として本校を希望して入ってきた子も多く、入学以前のチャレンジ精神に、入学後からの教育活動を通じて養われた自己肯定感と内発的動機の芽生えが加わることで頑張れるようになるのだと思う。これからも生徒たちが生き生きと学んでいける学校づくりを目指したい。
3.各教科について
(以下の昨年度の入試報告会レポートもご参照ください
http://www.h3.dion.ne.jp/~deepblue/edu/12oyu.htm )
①国語 受信力と発信力を問う出題というのは毎年変わらない。毎回物語文と説明文を1題ずつ出題するが、物語文の文字数が6000字~7000字と大目なので、説明文の文字数は1000字~2000字くらいになっている。
各回、各大問ともに、配点の大きい後半部分で合格者と不合格者の得点率の差が開いている。鷗友の国語は、前の設問で考えたことが次の設問を考える際のヒントになるような構成を必ずしているが、そのことがうまく使えていない受験生が多い。問題を解きながら文章への理解を深めていけるよう出題している。
記述問題の学習法として、色々なジャンルの本を読むとともに、読んだ本、読んだ文章の全体のあらすじ、要点を百字程度でまとめてみるという練習はよいと思う。
過去問を解きながら練習をするときは、本校で配布している採点事例集を見ながら、設問の条件が求めている要素ごとに、ちゃんと答えられているかどうかの採点をしてみるとよい。
自分の回答を声に出して読んでみたときに、一回で読める文章を書けるようにすることを目指そう。
②算数 全問題で途中式を書かせる記述式。実際の受験生の解答答案例などを見て「こんなに詳しく書けない」と言う人もいるが、考えていることが伝わりさえすればよい。例えば線分図を使う、平面図形であれば線分の比を書き込む、などの作業をしてくれればと思っている(逆に言うと、答えが合っていても、全く別の要素(例えば問題とは関係のない場所の面積など)についての解答だと分かる答案には、マルはあげられない)。
今年も割合と比の絡む問題で合格者、不合格者の差がついている。算数のどの分野でも、割合と日の取り扱いについてはこだわって出題をしていきたい。
設問には書かれていないが、問題を解いている中で、気が付く条件、設定などもあるのでそういったものを利用できるとよい。
例年よりも問題数を1問減らした回次があるが、それでも簡単な問題を解ききれていない答案が見られた。受験生には自分の得意な問題、解ける問題から解いていって欲しい。時間配分には慎重に。時間に余裕があればしっかり分析のできる問題もある。
③社会 初めて見る資料でもあわてずに。何に注目して解答すれよいかは、設問に必ず書かれている。
資料集の図やグラフは丸暗記するのではなく、自分の頭で考えながら理解すること。
問題文を性格に読み取り、自分の言葉で用語を説明したり考えや意見を伝えられるようにすること。 理由と、結論がはっきりした文章、文章の筋を通すこと、主語と述語の呼応に注意することを心がけよう。
好奇心を持って考えることを楽しもう。
④理科 初めて見るような出題でも、基本知識を確認しているだけのこともある
設問に書かれている条件、設定を利用すれば理解しやすい問題もある
基本的な事項だからこそ、なぜそうなるのかを考えて、実際の様々な現象を理解してほしい
そして、そこにグラフを読み取る力や、自分で式を立てて計算する力を加えてほしい
4.感想
昨年度の塾対象入試報告会のレポートでもお伝えしたことですが、鷗友学園の発し続けているメッセージは毎年ぶれることなく変わりません。記述力表現力を磨きながら、日々のコミュニケーションを通じて自己肯定感を高めていく。そのことを目指し続けた結果が昨春、そして今春と着実に進学実績をステップアップさせた要因なのだと改めて感じました。
今まで以上に生き生きと子どもたちが学べる学校づくりを通じて「学校が大好きな子どもたちが、友達と一緒になって目標に向けて頑張る姿」もより鮮明になることでしょうし、そのためのバックアップ体制も日々磨かれていくものと思います。
これから先の社会に求められる資質とは何であるのか。そしてそれらを各教科の学習を通じてどのように磨いていくのか。僕も一教師として何ができるのか、改めて自問しつつの帰路となりました。